Category Archives: スタッフブログ 勤務医のひとり言

296月/18

三叉神経痛について

歯や顔の痛みについて、今回は三叉神経痛を取り上げましょう。三叉神経痛は、脳の三叉神経根部というところで、神経が血管とぶつかってしまい、そこの神経のいわば絶縁体がなくなってしまい、神経が異常興奮することで痛みが出ることがほとんどです。一般的には、高齢の女性に多いと言われています。顔を洗ったり、歯磨きをしたり、物をかんだりしたときなどに、数秒の激しい痛みが、顔の左右半分のどちらかに起こります。このような行動をトリガーポイントを刺激するといい、トリガーポイントは個々の患者さんで異なります。刺激が加わったときのみ痛みが出現するため、患者さんはトリガーポイントの部位の病気をついつい疑います。そして、歯科に来られる患者さんは主に、痛くてかめないなど、歯髄炎や義歯の不調が原因に違いないと歯科医に訴え、それらの処置を要求することも多く見受けられます。しかし、歯や義歯が原因ではないので、そのような治療を行っても痛みは治まりません。現在では、治療法は確立されてきており、第一選択はカルバマゼピンという抗てんかん薬が特効薬です。この薬で神経の異常興奮を防ぐことができます、しかし、眠気・ふらつき・肝機能障害などの副作用も多い薬ですので、慎重に使用します。根本的に改善したいのであれば、脳神経外科で減圧術という、ぶつかっている神経と血管を離してしまう手術があります。また、最近では、ガンマナイフを用いた治療法も用いられるようになってきました。最後に三叉神経痛と疑われたからには、必ずMRIを撮影することをお勧めしております。というのも、ぶつかっているのが血管ではなく脳腫瘍のことも少なからずあるからです。当院からは、東京医科歯科大学歯学部附属病院ペインクリニックへの紹介状もお出ししていますので、ご利用の際は申し付けてください。

156月/18

歯科と痛み(非定型歯痛・非定型顔面痛など)

虫歯、歯周病、顎関節症などの病気が全く認められないのに、歯が痛くなったり、顔面が痛くなったりする病気、ご存知ですか?このような病気のなかに、非定型歯痛、非定型顔面痛というものがあります。私が大学病院で治療にあたっていたのは主に、このような患者さんでした。このような患者さんは、ドクターショッピングをし、何軒も歯科医院を渡り歩き、歯痛のため、歯の神経を抜いたり、最悪は抜歯を行ってしまったりします。それでも痛みは全く取れません。原因はまだ不明なのですが、おそらく脳の誤作動で痛みを感じてしまうのではないか、と言われています。そのため、治療は歯科治療ではありません。脳で誤作動を起こしてしまっている神経伝達物質を調整して痛みを抑えていくのです。代表的な薬物は抗うつ薬で、中でもトリプタノールという薬が昔からよく使われています。私の大学病院時代の患者さんNさん(女性)は、ある時、奥歯が痛くなり自宅近くの歯科医院を受診しました。様々な検査をした結果「何も問題はない」と言われましたが、どうしても納得できず、強く希望し痛い歯の神経をとってもらいました。ぞれでも痛みはとれず、再度強く希望し今度は抜歯をしてしまいました。しかし、原因は歯ではないので、痛みは全くとれません。Nさんはその後も歯科医院を何軒も渡り歩き、大学病院を紹介され、私の担当となりました。初診時にいろいろ説明させてもらいましたが、脳の誤作動からくる歯の痛み、ということをすんなり納得することはできなかったようです。しかし、藁にも縋る思いで受診されたNさんは、週1回、薬の調整(抗うつ薬など)に半信半疑ながらも通院してくれました。会社には休職届を出していて、何か月も働けていませんでした。それにも増してご主人様が、自分の痛みを理解してくれないということが、大変悲しんでおられました。会社には、病状に関して書類を書き、またご主人様と一度一緒に受診してもらい、ご主人様にこの特別な痛みに関してご理解いただきました。Nさんは、半月ほどの通院で痛みが和らぎ始め、一月後には八割がた痛みは和らぎました。そこで会社にも少しずつ復帰していただき、半年後には念願がかなって復職されました。その後、痛みはほぼ消失し、日常生活には何の支障もない状態まで回復しました。症状を安定させるためには時間がかかるため、維持療法を半年ほど行いました。維持療法の間、痛みがほぼ消失している状態が保てていたため寛解と判断し、薬の減量を開始し、ついにはNさんは薬がなくとも無事社会復帰を果たし、元気な生活が送れるようになりました。最後の診察の時、「最初は半信半疑だったけど、ついて行ってよかったです。全てを取り戻せました。ありがとうございました。」との言葉をいただいた時には、本当に良かったと、心を打たれた思いでいっぱいでした。

046月/18

CR充填は難しい


CR充填は難しい。歯科では一番当たり前に行われている処置だが、実は結構奥が深い。
奥歯の噛み合わせ面から、隣の歯と向き合っている面にかけて虫歯がある患者さんの場合、型とりをして金属で治すか、白いプラスチックで治すか、我々も悩みます。先日、白いプラスチックで治すことを患者さんが希望され、処置しましたが、直接見ることが難しい奥歯では、処置が難しいと感じました。
特に難しいと感じたことは、大きな虫歯を削って歯の形が崩れてしまったところを、きれいに再び歯の形に作り直すことと、食べ物が歯と歯の間にはさまらないように、歯と歯が適切な強さで当たっている(コンタクトと言います)ように作り直すことでした。
私は、形をきれいに作り直すことばかりに意識が向き、コンタクトがほんの少し緩くなってしまいました。幸い、手が空いていた院長が修正を加えて、無事患者さんの詰め物は適切なコンタクトを回復しました。
上手くなってきたなと実感していた矢先の出来事でしたので、もっと修練せねばと痛感した症例でした。
今回学んだことは、患者さんが白い詰め物を希望しないのであれば、大きな虫歯で隣の歯との接触が必要なケースでは、金属で治したほうが良いこともある。白い詰め物でなおすのであれば、コンタクトの強さ回復も頭に入れて、かつ外れにくい形態を付与することなどでした。
今後、審美面で考えるならば、笑った時や会話をしているときに見えてしまう下顎の歯に関しては、金属より白いプラスチックの詰め物で治したいと希望される患者さんも増えてくる可能性も考えられます。あらためて白いプラスチックの詰め物は、奥が深いと感じます。私は、今後もためにも修練を積んで、白いプラスチックの詰め物で治したいときぼうされる患者さんがいたら、自在に対応できる技術を身につけたいと感じました。